私は東京医科歯科大学の歯周病専門外来にて、難症例を含む幅広い治療の研鑽を積み、その後は都内歯科医院にてお子さんからご高齢の方まで多くの患者様のお口の健康づくりをサポートしてまいりました。
患者様一人ひとりの症状やご希望に合わせて、あらゆる治療の選択肢をご提案し、心から納得していただける治療法をお選びいただけます。神保町ミセ歯科・矯正歯科は、患者様との信頼関係を大切に築きながら、ドクター・スタッフともに一丸となって、あなたの健康を末長く支えてまいります。

マウスピース矯正をしたいけれど「どれくらい痛みがあるのかが心配」という方もいるのではないでしょうか。
矯正治療は長い期間をかけて行うものですし、マウスピースはほとんど一日中装着していなければならないため、耐えられないほど痛むようでは困りますよね。
結論をいうと、マウスピース矯正の痛みの程度は、人によります。痛みの原因もいくつかあり、どんな痛みがあるかもそれぞれ異なります。
本記事ではマウスピース矯正による痛みの程度や原因について解説するほか、軽減方法についても紹介します。
これからマウスピース矯正を考えていて、痛みについて不安に思う方は、ぜひ参考にしてください。
マウスピース矯正はどれくらい痛いのか?

マウスピース矯正による痛みの程度には個人差があります。 しかし、歯にかかる力はワイヤー矯正よりも小さく、耐え難いほどの痛みを感じる方はほとんどいません。
新しいマウスピースに変えた直後(マウスピース矯正では、装着するマウスピースを治療段階に応じて交換していくため)は、圧迫感に似た痛みや違和感を感じますが、これはマウスピースが歯を正しい位置に移動させるための矯正力によるものです。
マウスピースの交換から時間が経過し、歯が移動すれば収まることがほとんどです。
もし、痛みが強かったり、時間が経っても収まらなかったりする場合は、歯科医師へ相談しましょう。
マウスピース矯正の仕組みについて
歯の根本には、歯槽骨(しそうこつ)と呼ばれる歯を支える骨があり、歯槽骨の周りには歯根膜(しこんまく)と呼ばれる組織があります。マウスピースの矯正力により、歯が動くと、歯の移動方向側の歯根膜が縮み、反対側は伸びます。
すると、歯根膜は歯槽骨の両サイドの厚さのバランスを取り戻すため、細胞を作って圧力がかかる側の歯槽骨を吸収し、反対側のすき間には新たな骨を形成します。
この動作の繰り返しで、歯を少しずつ移動させます。
また、1枚のマウスピースで移動できる長さは最大で0.25mm程度です。
1ヵ月間では1mm程度移動させられます。 段階的かつ継続的に力を加えることで、無理なく歯を理想の位置へ導くのがマウスピース矯正の仕組みなのです。

マウスピース矯正とワイヤー矯正の痛みの比較
一般的にマウスピース矯正は、ワイヤー矯正よりも痛みが少ないといわれています。主な違いとしては次のようなことが挙げられます。マウスピース矯正 | ワイヤー矯正 | |
---|---|---|
痛みの強さ | 軽〜中度 | 中〜強度 |
痛みの感覚 | ・違和感 ・圧迫感 ・窮屈 | ・締め付けるような痛み |
痛みのある期間 | マウスピース交換直後数日間 | 矯正器具の調整後数日間 |
痛みやすいとき | 装着中 | ・歯を噛み合わせるとき ・強く噛むとき |
痛みの原因 | ・マウスピースによる矯正力 ・粘膜への刺激 | ・ワイヤーによる強い矯正力 ・ブラケットによる刺激 |
マウスピース矯正が、何枚ものマウスピースを使用して段階的に歯を移動させるのに対し、ワイヤー矯正は一気に歯を動かします。
その分、歯にかかる力が大きいため、装着後はしばらく痛みが続く場合もあります。
また、装置の形状の違いも挙げられます。ワイヤー矯正は、固い装置が粘膜や舌にあたって口内を傷つけ、口内炎ができるなどのリスクがあります。
一方、マウスピースは比較的柔らかい素材であるため、ワイヤー矯正ほど口腔内を傷つける心配はないでしょう。
ただし、適切に装着できていない場合は、マウスピースでも口内が傷つくリスクはあるため、注意が必要です。
マウスピース矯正の痛みの原因

痛みは少ないといっても、マウスピース矯正にも多少の痛みはあります。
その原因としては主に以下の5つが挙げられます。
歯の移動による痛み
マウスピース矯正では、マウスピースが歯に継続して力を加えることで、歯槽骨の吸収・再生が繰り返され、徐々に歯が動きます。移動の際には神経も刺激されるため、一時的に痛みや圧迫感を感じるでしょう。
特に新しいマウスピースに交換した直後は、新たに矯正力がかかり、歯は新しい位置に動かされるため、痛みが出やすいといえます。 しかし、数日で収まるケースが多く、不快感も長くは続かないはずです。
また、歯根膜も歯の移動によって頻繁に伸び縮みを繰り返すために、通常よりは敏感な状態になります。
歯にかかる力によって刺激への耐性が低下するため、硬いものを噛むなどすると普段は感じない痛みが出る場合があります。
粘膜が刺激されることによる痛み
マウスピースはプラスチックの一種であるポリウレタンでできています。比較的柔らかい素材ではありますが、歯の状態に合っていなければ粘膜に圧力がかかりすぎ、痛む可能性があります。
特にマウスピースの縁が、しっかり研磨されていなければ、口内に傷ができてしまうことがあります。ひどい場合、口内炎ができてしまうケースもあります。
このような場合は、早急に歯科医師に相談し、調整してもらいましょう。
後戻りによる痛み
マウスピース矯正では、20〜22時間の装着時間を守ることが非常に大切です。基本的に、食事と歯磨き以外のときは常時マウスピースを装着しておかねばなりません。装着時間が短いと、せっかく移動させた歯が元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こります。
マウスピースを付けると、再び歯の移動が起こるため、新しいマウスピースに交換したときと同じような圧迫感や痛みを覚えるでしょう。
再び正しく装着を続ければ、歯が適切に移動するため痛みは徐々に収まっていきます。
ただし、長い期間装着せずにいると、痛みが強いために同じマウスピースを装着できない可能性もあります。その場合は早めに歯科医師に報告し、相談しましょう。
歯周病や虫歯による痛み
虫歯や歯周病があるために歯が痛む可能性もあります。マウスピース矯正は、装置の取り外しができる分、ワイヤー矯正よりも歯磨きがしやすく、虫歯になりにくいことがメリットです。
しかし、マウスピースの装着によって、自浄作用のある唾液に歯が触れる時間が短いため、通常時よりは虫歯になるリスクが高まります。
症状が悪化すると、矯正治療を中断して虫歯治療を優先しなければならない可能性もあるため、注意しましょう。
また、矯正によって歯が移動する際には、歯茎に負担がかかります。
普段よりも炎症が起こりやすく、炎症が起こった場合は歯ぐきが腫れて、痛みが出やすい状態です。
歯周病を予防するためにも、特に矯正期間は、普段よりも歯磨きを丁寧におこないましょう。
歯周病とは、歯を支える歯ぐきや骨などの組織に炎症が起こる病気で、放置すると歯を失う原因にもなります。
歯と歯ぐきの間に歯垢(プラーク)や歯石がたまり、細菌が繁殖することで、歯ぐきが腫れたり出血したりします。
進行すると歯槽骨が溶けて歯がグラつき、最終的には抜けてしまうこともあります。
初期段階では痛みなどの自覚症状が少ないため、定期的な歯科検診と正しいブラッシングが重要です。
歯と歯の間に食べ物が挟まることによる痛み
マウスピース矯正では、歯が徐々に動いたり、歯を移動させるために削ったりして歯と歯の間にすき間ができやすくなります。そうすると、そこへ食べ物がつまりやすく、そのまま食事を続ければ、詰まったものが余計に押し込まれ、歯茎を圧迫し、炎症を起こしやすくなります。その結果、ズキズキとした痛みを覚えることもあります。
食後は歯磨きだけでなく、デンタルフロスや歯間ブラシを使って丁寧にケアを行い、歯と歯の間もしっかり掃除することが大切です。
マウスピース矯正による痛みを軽減する方法

痛みは誰でも嫌なものです。矯正期間中にできる限り痛みを感じないようにするためにも、以下のことを実践しましょう。
矯正の前に歯周病や虫歯を治しておく
すでに歯周病や虫歯があるなら、矯正治療を開始する前に治療しておきましょう。マウスピース矯正によって、トラブルのある歯や歯茎に力が加わると、歯周病や虫歯による炎症が悪化し、痛みにつながる恐れがあります。
特に虫歯は、削ったり詰め物を入れたりすることで歯の形が変わる可能性があるため、基本的に矯正治療と並行しては行えません。
重度の場合は、矯正治療を中断して虫歯治療をすることになるでしょう。
一方、歯周病治療なら、矯正治療中でも可能です。
歯周病が見つかったり、悪化したりした場合は、矯正治療を担当する歯科医師に報告のうえ、速やかに一般歯科での治療を開始しましょう。
当院には日本歯周病学会認定医が在籍しており、矯正治療中に虫歯や歯周病が見つかった場合にも、迅速に適切な治療を行うことが可能です。
お口の健康状態を丁寧に管理することで、治療の中断や遅れをできる限り防ぎ、円滑に矯正治療を進められるよう努めています。
当院の歯周病治療はこちら
鎮痛剤を処方してもらう
痛みが耐え難いほど強い場合は、鎮痛剤を服用しましょう。ただし、鎮痛剤の中には抗炎症作用があるものが含まれるため、薬剤は必ず医師の処方を受けましょう。歯が移動する際に起こる、歯槽骨の吸収は炎症物質によるものであるため、炎症が抑えられると、十分な矯正効果を得られない可能性があります。
自己判断で対処せず、必ず歯科医師に相談してください。
マウスピースを常に清潔に保つ
マウスピースは少なくとも1日に1回、可能であれば毎食後洗浄しましょう。汚れたマウスピースを装着し続けると、細菌が繁殖しやすくなり、歯茎の炎症や口内炎、さらには虫歯や歯周病を引き起こしやすくなるからです。
悪化すれば、痛むだけでなく、治療の中断や遅れにつながるリスクもあります。
マウスピースの洗浄は柔らかいブラシや指でやさしく洗い、流水でしっかりすすいで行います。
また、熱湯での洗浄は変形の原因となるため避け、2、3日に1度は洗浄剤を使用してケアしましょう。
定期的に受診する
歯科医師の指示に従い、定期的に状態をチェックしてもらうことも大切です。歯の移動状況を確認してもらえる他、痛みがある場合は、解消するために適切な処置を行ってもらえます。
また、歯や歯茎に炎症が起きていないか、虫歯や歯周病を起こしていないかなども診てもらえるため、痛みの予防も期待できます。
受診を怠り、事前にトラブルを発見できずに悪化した結果、予定通りに治療を進められない可能性もあります。通院を継続し、不安があればすぐに相談することが大切です。
マウスピース矯正で痛みが出たときに気をつけること
マウスピース矯正は、ほとんどの場合、あまり強い痛みはないはずです。万が一、痛みが出てしまったときには、以下の点に気を付けましょう。
マウスピースを長時間外さない
痛むからといってマウスピースを長時間外してはいけません。装着時間が短ければ、歯に十分な矯正力がかからず、歯の移動がスムーズに進みません。再びマウスピースを装着した際に強い痛みを感じる原因となります。
さらに、せっかく移動した歯が後戻りしてしまう可能性もあり、再度装着した際に痛みがより強くなる可能性もあります。
その結果、予定通りに治療が進まず、余分な時間や負担がかかることもあるでしょう。
あまりに痛みが強い場合は、鎮痛剤を服用するか、痛みの少ないマウスピースを着用して、早めに医師に相談しましょう。必要に応じて、追加でマウスピースを作成し、対応するケースもあります。
鎮痛剤を飲みすぎない
消炎作用のある市販の鎮痛剤は飲みすぎないようにしてください。歯の移動は、骨の吸収と再生という代謝によって起こります。そして骨の代謝は、炎症反応によって起こるため、あまり頻繁に鎮痛剤を服用すると、歯が動きにくくなります。
そのため、痛みがつらい場合でも、鎮痛剤は必要最低限の使用にとどめることが大切です。
痛みが長引いてどうしても辛ければ、歯科医師に消炎作用のあまりない鎮痛剤を処方してもらいましょう。
痛みが続く場合は歯科医院へすぐに相談

マウスピース矯正は、装置交換後の2〜3日程度は痛みがあるものです。
しかし、あまりに痛みが長引いたり、眠れないほどひどい痛みであったりするなら、装置が合っていない可能性があります。
すぐに歯科医師へ相談し、調整してもらってください。
他にも、虫歯や歯周病であったり、装置の縁が尖っていたりするために痛む場合もあります。
自己判断で放置すると症状が悪化し、矯正治療の中断や再調整が必要になる可能性もあるため、少しでも異常を感じたら、早めに歯科医院を受診しましょう。
まとめ
マウスピース矯正をすると、多少の痛みはあるものです。歯の移動による痛みなので、基本的に異常なものではありません。
通常はマウスピース交換後2〜3日程度で治ります。
ただし、適切にマウスピースを装着しなかったり、虫歯や歯周病があったりした場合は痛みが長引いたり、強かったりすることもあります。
そのようなケースでは、自己判断せず早めに歯科医師へ相談しましょう。
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日付: 2025年4月22日 カテゴリ:矯正歯科